監査役BLOG

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会社経営7

 前回も書きましたが当社は医療・介護分野を領域としており、私もその中にいました。 医療介護は労働集約型の事業です。

一度オランダの処方箋調剤薬局のビデオを見せてもらいましたが、郊外に小さな工場のような建物があり、大型の調剤機器が並んでいます。 処方箋のQRコードを機械に読ませると薬剤の入ったプラスチックのボトルが取り出し口から出てきます。 それを袋に詰めると学生アルバイトが自転車で配達するシステムです。

日本では錠剤はヒートシートになっていて処方箋記載の錠数に応じてシートを棚から取り出します。 1枚の処方箋に記載薬剤がそろえばそれを別の薬剤師が監査(内容に間違いないかチェック)し投薬します。

オランダのほうが合理的で、日本の労働生産性が先進国で下位であることに納得します。 欧米の映画を見ていて薬を飲むシーンがあり、すべてがすべてプラスチックケースから薬を取り出しています。 アジアの映画でこのシーンに出会ったことはありませんがおそらく同じと思います。

当社の薬局だけこの方式をとることができません。 プラボトル入りの薬剤を注文しても日本では製品化されていません。 ヒートシートであることの意味はあるのでしょう。 医療業界でこの種の非合理を伴った方式の固執は私もいくつか目にしました。 行政の考えか業界の意識が知りませんが薬剤費の節約よりそれにかかわる人権の節約が額として大きいと思われます。

前回の記事で医療介護以外の事業をM&Aで購入する話をしました。 医療介護は時間とともに収益性が低下する以外に政治的な不合理やしきたりの制約が個人として関心のわかないところです。 人の健康や生活を守る仕事は制度で守られていて社会に貢献していることを実感しやすい事業であります。 しかし医療介護以外の事業は社会貢献しないかというとそんなことは全くありません。 貢献の程度が利益として実現するわけです。 従事者一人当たり、売り上げに対する利益の割合の平均は医療介護において他事業領域より低く、その意味で社会貢献度は低いことになります。

 

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[会社運営]

会社経営6

 当社は薬局経営から始まった会社です。 かつて処方箋調剤は病院内で行われ、多くの薬剤を処方することで過剰投薬が問題となり、院内処方調剤の点数を切り下げたため多くの病院が院外処方を発行するようになり、処方箋調剤薬局は乱立し、チェーン化して上場するところまで展開しました。

処方箋調剤を行うと薬局は薬価マージン差を得ることができ収益性が高く大病院の門前の土地は値上がり締まりした。 社会保険事務所に月に一回調剤を行った処方箋を持ってゆくのですが、大手の薬局は段ボール箱数箱を高級車に積んで持ってきます。 だからというわけではないでしょうが業務でヨーロッパ車を使うほどには儲かっていたようです。

厚生労働省は院外処方せんを促進し薬剤費の低減が達成すると薬価マージン差を無くすよう薬価を決め、調剤報酬を減らして薬局の収益を圧縮してゆきます。 一般に制度ビジネスと呼ばれるものは行政の制度変更に従わざるを得ず、事業としての自由度は低いものです。 私は制度微子ネスが社会的に必要であることは理解しても事業としてやりがいを感じませんでした。 2000年に介護保険が施行されると当社も介護ビジネスを始めました。 しかしこちらも制度ビジネスに変わりはなく介護保険サービスが社会に行き渡ると調剤薬局と同様に事業者の利益を圧縮する制度改定が行われます。

私はできる限り早く制度ビジネス以外の事業の柱を作りたいと思いました。 しかし薬局の経営をやってきて他の事業に取り組むことは難しく、ヒト・モノ・カネ・ジョウホウのどれもがありません。 介護事業はフランチャイズ契約のもとに始めましたが契約を解約することで戦略展開に自由度が増し大きな利益を生むようになりました。 この利益が制度変更でなくなる前に何とかしなくてはと思っていたら丁度小規模事業会社のM&A仲介が出始めました。 日本全国で助成金対象となるような小規模会社は数百万社あり、かなりの割合で後継者がいなくて会社存続が危ぶまれるようになりました。

本来商売・事業は何らかの差を埋めることで利益をか得するものです。 石油を消費する日本は油田がありませんが産油国は自国消費を補って余りある採掘を行うことができ、その温度差に利益を伴います。 新たに事業を始めたい当社にとって新規事業を立ち上げるのは至難の業、事業を買えるならそのほうが確実に利益を得ることができます。 仲介会社に紹介を依頼すると医療・介護のビジネスばかり紹介してきます。 本業とあまりにかけ離れた事業を紹介して失敗されては信用問題だと思ったのでしょう。

こちらの意図を徐々に理解した仲介会社は世の中にあるあらゆる事業を紹介してくれるようになりました。 その中から選んでゆくわけですが、これが大変で医療・介護以外の事業分野は事業内容はなかなかはあくできません。

希望すれば膨大な資料が送られてきますが会計資料や出勤簿、不動産の謄本などで業務内容やリスクについての資料は少なく、事業運営のイメージはつきにくいです。 株式投資の判断基準としてPBR(price book value ratio)に近いものが重要な判断基準となってきます。 譲渡価額は純資産の何倍か、もしくはPER(price earnings ratio)譲渡価額は純利益の何倍か、です。 もちろん成長性や競争環境、すぐになくなったりしない事業を選ぶことは当然ですがそもそも将来性のない事業は仲介対象にはなりません。 東京証券取引所に上場する大きな会社のPER平均は15倍前後らしいです。 紹介される企業は零細であり、安定しないので3~10倍程度でしょうか、上場会社と比較すれば大変割安です。

こういった零細企業の社長は一代でその会社を作り上げた優秀な技術者だったりしますので後継者のことまで手が回らなかったというようなケースが多いように思います。 経営管理面ですぐに手当てを必要とすることが多く、逆にそれをこなせば伸びしろがある場合も多いという事でしょうか。 このようにして当社はM&Aによる企業買収に着手しました。

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会社経営5

 零細企業に限らず意思決定のスピードは重要です。 何かを決めるのに時間がかかる人とそうでない人の違いはその人の価値観など個人差かもしれません。 いつも時間がかかるように見えても決めるのはさっさと決めていて決めたことを実行するのにタイミングを見計らい決めたことも公言しない人もいます。

将来このようにしてゆきたいというビジョンを持っていれば悩ましい問題も判断が早くなるように思います。 ビジョンを持てということを経営者のセミナーなどで推奨されますが、ビジョンをもてとアドバイスされて現実的なビジョンをなかなか描けるものではありません。

私が経営に関与しだしたときに会社は混乱していました。 問題が放置され、それが常態となっていて、モグラたたきに個別に対処しましたがうまくその問題が解決しても会社自体は良い方向に向かったように実感できませんでした。 良い方向とは何かと考えた時最初に思ったのは社員教育、私は人に教えるのが得意でなく教えるのが得意な人を自分の周囲で探し、入社してもらいました。 ドラッカーの本をテキストにして社員教育が始まり会社は肌感覚では体質が改善されました。 ドラッカーのテキストは経営者向けで社員教育に違和感がありましたが、経営とはどういうものかが解説されていてそれが効果的であったと後でわかりました。

同時に将来ビジョンを考える余裕が出来て、私自身もドラッカーに影響され将来ビジョンの基本として永続的な経営を意識しました。 規模拡大を一番に意識するとかではなく最適規模の経営を目指そうと考えました。 社員教育をしてくれた人はビジョンのもとも提案していただき『百人の社長を育てる』と言い出しました。 ドラッカーをテキストにした意味を納得しました。

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[会社運営]

会社経営4

 介護事業のフランチャイズ契約を解除して大きな利益を生むようになりました。 わかっていたこととはいえフランチャイズ事業を調べてみましたがフランチャイジーがそれなりに利益を稼げるものとフランチャイザーが利益を集約するもの、そもそもフランチャイズに不向きな事業、本部運営が上手く行っていないものなどいろいろあることがわかりました。 私見ですがP社はFC運営に問題があったように思います。 現在もFCは運営されていますがネットで見る限り上手く行っておらず、現経営者も私が知る限り経営素養のない人が担当しています。

FC離脱後事業運営は上手く行き、大きく利益を得ることが出来て人も雇うことが出来ました。 当社の祖業は調剤薬局、厚生労働省管轄の制度事業はルールでがんじがらめにしておいて利益を圧縮するものです。 医療関係は医師が圧力団体を持っているので利益体質を維持していますが、団体を持たない薬局は絞れるだけ絞られます。 それゆえ厚労省関連の制度ビジネスから離れたいというのが方針でした。

そこでM&Aにチャレンジしようと大手仲介会社にコンタクトを取りました。 担当者が来て譲渡価格は数十億円のものを扱っているといわれ、とても手が出ないと思いましたが、中小企業の事業承継が社会問題になり、仲介会社が仲介対象として参入してきました。

新たに仲介業を立ち上げ、この分野に特化した仲介会社とコンタクトが取れました。 紹介されるのは確かに小ぶりの会社が多く、譲渡価格も手ごろです。 しかし業種はいろいろで医療・介護事業以外は知見がなく判断が付きません。 その仲介会社の社長が来られ、一渡り紹介案件を説明して最後に『まだ依頼を受けたばかりですがとても収益性が良い会社があります」と帰り際におっしゃい、私は「ちょっと待ってください、その会社のことを教えてください」と言いました。 埼玉の会社で手術時にレントゲン撮影する受光部のカバーを製造するメーカーとのこと、パート10人と社長だけの会社でとても利益を上げておられます。 私はその会社に連絡し、すぐに埼玉の会社まで訪問しました。 社長と和やかにお話しできてこの話はまとまるかと思いました。

帰社後取締役会で『私はこのM&Aが成立したら代表を辞任して個人でその会社を買いたい」というと反対2人、賛成3人で了解されました。 埼玉の会社の社長から電話があってM&Aを断ってこられました。 理由は私がうえろくの代表をしているから代表が抜けるのは良くないというものでした。 まったく大きなお世話、とはいえ断られたのであきらめ、引き続き会社にとどまることにしました。

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