監査役BLOG

カテゴリ

趣味

[趣味]

東京家族

小津安二郎監督(故人)の同名作品を山田洋二監督・脚本でリメイクした作品です。

簡単なあらすじは橋爪功(元厳格な教師)夫妻が、瀬戸内海の小島から3人の子供が暮らす東京にやってきて、それぞれの家に住むだけで、その間の日常の話題だけの物語です。

原作の小津作品はTVで一部を見ましたが、面白いと思いませんでした。 つまり最後まで見ることが無かった作品です。 しかしカメラアングルや父親役の笠智衆が座敷に正座して原節子に話しかけるとき、淡々と話す笠のたわいも無い内容に『一体どこが見どころか』と思ったものです。

リメイク作品は原作を意識しつつ、親子間の意識のずれ、地理的、年代的なものですが、現代的な小道具や価値観を通して見事に描いています。 初めて原作で訴えようとしたものがこの時代のずれだったのかと思いました。

主人公の妻は末っ子のだめな子のフィアンセに接して末っ子の人柄に触れ、初めて理解を示した直後脳血管障害で倒れて翌朝息を引き取ります。 ただそれだけのことで止めども無く涙が溢れました。 肉親との死別の悲しさやむなしさ、それもテーマでしょうが、私は母親の早すぎる死別も(役の上では68歳)、親子間の意識のずれやすれ違いを顕すための演出に思えてなりません。

主人公が元同僚と居酒屋で飲んでいて、「日本はどうなるんだ」と独り言を言うシーンがあります。 政治や文化や経済やライフスタイルや価値観、それらを超越しても子供との、あまりに変わってしまった子供との接点を模索する主人公夫妻は批難せず、じっと観察しています。

同じ国に住み、同じ年代を生き抜く人の間を貫く愛情や諦観を見事に描いた作品だと思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

上に戻る