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アベノミクス

海外でも評価の高いアベノミクス、第三の矢にあたる経済再建、その入り口で賃金上昇が話題になっています。 アベノミクスの全体像と目的は新聞でも解説されていますが、今一つ納得できないものがあります。

日銀の黒田総裁による異次元緩和はマーケットから国債を買い込む、政府から直接購入するのは禁じ手ですが結果は同じ、法的規制をかいくぐり、国債を買うことで国債の信用力をコントロールし、低金利を維持する、為替を円安にぶれさせる、それも輸出関連の大企業が程よい円/ドルレートと民主党政権時代に言われていた100円/$近辺で何か月も張り付いているのはさすがの感があります。

輸出ウェイトの高い企業は史上最高の決算で、日本は年率2%のインフレに向かいますから賃金を上げてくださいとここまでは筋が通っていると思います。 日本の企業の中には海外企業のM&Aで海外進出を加速させ、いずれ好決算を迎える企業も目白押しです。 国際的にもTPPが目の前に迫っています。

個別の企業、個別の製品について価格が2%上昇すれば、その製品原価に占める労働費は産業分野によって異なり、装置産業~小売業で30%~70%程度です。 200円価格が上昇し、原料も2%上がればその製品にかかわる人件費も2%上がれば公平感はあります。 仮に人件費の製品価格占める割合が50%なら200円の50%で100円の人件費増、給料という観点ではやはり2%アップになります。

競争力の弱い分野で製品価格を2%値上げし、2%賃上げすれば競争力がないゆえにマーケットから撤退することになるでしょう。 勝ってる企業は賃金を上げ、売上数量が同じなら売上高は2%増加し、賃金も2%増加し、企業の利益はその企業の財務体質にもよるでしょうが黒字企業であれば2%以上の利益増になります。

この単純化された計算では企業の利益の積み増しに見えますが、年率2%のインフレが達成されれば税引き後利益が2%アップしてもその価値は前年同額となります。 そこで一番得をするのが大きな負債を抱えている主体で、国債発行残が1000兆円を超える国家で、年率2%の減価、つまり毎年20兆円の負債の重みが軽減することになります。

法人所得税減税で企業の投資意欲が増加して生産効率が上がり(日本の生産性は国際的に低い)、賃金上昇で個人所得税収が上がり、医療・福祉の財政支出を抑え、国の債務がさらに減少すれば政権安定に寄与します。

では誰が割を食うかと言えば生産性の低い産業分野に属する企業とそこで働く人で、結果的には格差拡大に向かうことになり、野党はこれら一連の施策に反対することになります。 さらに資産保有者ということになるでしょう。 1億円の預金はインフレ率-預金金利=マイナスとなりますので、お金持ちは土地や株式に資産を振り向けるでしょう。 海外に外貨預金する人も増えてくるでしょう。

自由経済の下で優勝劣敗や国際間の障壁をなくしてゆくトレンドは鎖国でもしない限り避けられません。
競争力の弱い企業にも投資を促すべく、銀行にディテールの貸付増を財務省は促しており、当社のような零細企業にもメガバンクの営業担当は営業に来られます。

小泉政権時、規制緩和で国際競争力を高める政策が多くみられ、郵政民営化もその一つだと思います。 あの頃タクシーに乗ると運転手が突然と「小泉は悪い」と言ったのが印象に残っています。 最近の記事でタクシーの総量規制について記事が出ていました。 自由化に向け国は着々と規制を再開し、経済政策が上手く軌道に乗れば規制緩和を始めると思います。

貿易統計で赤字が史上最高となっており、発電原料の輸入増が原因のようですが、一時的なものと評価されています。 輸出ドライブがかかれば吸収できる範囲で、長期的にはシェールガスのおかげて燃料資源価格は上げどまりしているように思います。

総括すればよくできた政策転換に見えますが、大きな変化に軋みはつきもので日本の復活に海外諸国が手を拱いているはずもなく、日本企業の技術力で国際マーケットに必ず打ち勝てるとは限りません。

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