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意思決定

[意思決定]

現実主義者の判断

リーダーシップについて少し調べてみようと思い、ジョセフ L バダラッコの『ひるまないリーダー』、『静かなリーダーシップ』、『決定的瞬間の思考法』を読みました。

バダラッコ先生はセントルイス大学、オックスフォード大学、ハーバードビジネススクールでMBA,DBAを取得し、ハーバードのMBAコースで企業倫理を教えておられるそうです。

単純に経営論として取り組んだのですが、学術書や実践的な著書ではなく、最初に読んだ『ひるまないリーダー』のあとがきでは「本書はエッセイである」と書かれていました。

企業活動において経営幹部は様々な意思決定をなす上で、善悪の判断ではない判断、どちらも正しいが選択する根拠が見当たらない場合にどのようにすればよいか、を解説していますが『こうして良かった』ではなく現実はこのような判断でこのような結果になったと解説しているだけです。

例示されたものの一つは次の通りです。 フランスの医薬品メーカーは妊娠してから避妊できる薬剤を開発し、販売すれば宗教上の理由などでその会社への批判が高まる一方、人口増加を止めたい国からは発売を大きく期待され、そうでない国においても手術によらず堕胎できる薬剤への期待は大きく、両者の板挟みで発売するかどうかの決定を迫られた経営者の話です。
経営者は承認申請の翌日、製造販売凍結をする旨決定し、販売に反対する勢力はその企業への攻撃をかわされ、販売賛成派からは企業責任を果たせない決定とこき下ろされました。

フランスでは社会的価値のあるパテントを実施しない場合は国家がパテントをはく奪する規定があり、それが発動されることになりました。 そこで医薬品メーカーは反対運動にもかかわらず製造販売に乗り出し、反対派の矛先はその企業から政府へと変わったそうです。

氏は旧来のリーダーシップでは明快な説明の元、その薬剤の販売を決定するような行動を想定しますが、現実的ではないとの判断です。 批判にさらされて販売を凍結したことが批判の嵐に晒されても結果的には製造販売が出来て企業として社会的責任を果たし、賛成派と反対派の無益な構想を避ける事が出来たわけで、氏はそれが良いとか悪いとかではなく現実主義者の判断であるとしています。

現実とは何か? 企業活動における倫理とは? 別にハーバード大学のMBAでテーマになる事なのか、それが経営学なのかという印象を持ちましたが、私の読解力の無さと感じています。

ハリウッド映画でリーダーと言えば明快で対立するものとの闘いがテーマになりやすいですが、例示した製薬メーカーの悩みはや決定はハリウッド映画にはならないでしょう。

書評できる力量がないので読後の印象程度と思っていただきたいと思いますが、日本の物語では大岡裁きを思い浮かべる所です。 このような事を研究し企業のリーダーシップや人事評価に役立てるのは現在社会が複雑系になっている事の表れで、かつての西部劇や日本のチャンバラ映画では明快な善悪がテーマになりますし、最近ヒットした『下町ロケット』も善悪の構図をテーマにしています。 どちらも正しい選択肢の選択は痛快ではないのでしょう。

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