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シンプルな営業

 小説家で三浦しおんさんの作品を続けて読んでいます。 最初に読んだのが『まほろ駅前多田便利軒』、三浦さんは1976年生まれですから私より33歳若く女性、私は小説が好きでよく読む方だと思いますが30歳以上若い作家で女性の作品を読むことはほとんどありません。

 まほろ駅前多田便利軒はいわゆる便利屋を主人公として、依頼主の要望をこなす様子を作品にしています。 便利屋は仕事の多くは依頼主の自宅内に入ってする仕事、依頼主のプライバシーに入り込むことが多く、短編集としています。

 他人のプイバシーは何であれ重たく感じるもので、短編で軽いタッチで読者の負担を減らせています。 読者の負担が重くなりすぎると喜劇も悲劇も受け流せなくなるでしょう。

 登場するのは多田と行天の高校が同級生の30男、どちらも男性です。 多田は結婚生活の破たんから立ち直るために会社を辞めて便利屋を立ち上げ、ストイックに仕事に打ち込むことで過去を洗い流そうとしています。

 行天は直観に従って生きる変人で、仕事はいい加減、しかし真実を瞬間に見通して余計なことを言ったりやったり、天才肌の変人です。

 話は変わりますが、会社の営業ミーティングで各営業職員が毎週どのようなことを目標にして何をし、どのような結果を出したか、報告するときに他の営業がコメントします。 こうすればよかったんじゃないか、相手の発言はこういう意味ではないのか、質問と同時に評価がなされます。 質問する人は自分も同じ成果を期待できないか自分中心で考えています。 人の行動と良い結果は応用できるかもしれないので会議の目的でもあります。 評価はよくある『営業鉄則〇〇、これで営業が決まる』的な本のようです。 他人の行動と結果について無責任なことを偉そうに言う必要がどこにあるのかと思います。

 私は聞き流すことにしていますが、得意がって言っている話が聞こえてくると正直気分が悪いです。 もちろんとんでもない勘違いはあるものなので私の場合『それはこうこうということですか?』と質問します。 しかし質問する前に獲物を見つけたハンターのごとく突っ込みを入れる輩がいます。 当然成績はあまりよくありません。

 多田便利軒の多田は他人のプライバシーの最深部に入ったときに評価にあたることは一切言わないようにしています。 それが営業の本質、著者は顧客の最深部に潜む問題を瞬時に感じ取り、とんでもない言い回し、茶化したり、露悪的であったり、で言ってしまったり、黙っていてその問題が顕在化するような行動にわざと出たりします。 もちろん作品だからできることで現実にそのようなことをすれば多田便利軒は廃業になるでしょう。

 作品で多田は凡庸で誠実な人として描かれています。 その多田も行天の天才的直観と同じ評価を抱くときがあります。 著者によって考え抜かれた行天 の直感が描かれますが、書かれている状況だけから真実にたどり着くのは現実的ではないでしょう。 そんな人がいたらシャーロックホームズや相棒の杉下右京、スティーブジョブズ、ビルゲイツのように歴史に名を遺す人たちのようにそれぞれの分野で歴史に名を残すと思います。

 真実を瞬間に見抜く卓越した洞察力はそれを利用できて大きな成果に早くたどり着くわけで、多田はこの先便利屋を一生そつなく続けるでしょうし、行天が便利屋家業を続けるなら全国チェーン展開を図ることでしょう。

 作品と現実の会社の営業ミーティングを比較してわかることは他人の評価は自分にとっても 相手にとってもそれが真実に近ければ意味がありますが、良い結果を生むという意味では言わないに越したことはありません。 大きい成果を生むために因果関係の真実を探ることは有効ですが、真実をもとに評価につなげられることは大変まれであると経験上思います。

 そもそも他人の評価で真実を言い当てていると思うことは言われた評価を手帳に書いて10年程度たってから見直して、なるほどその通りなったということです。

 当社の営業職員の成績は標準偏差のカーブを描いて分散しています。 実績を上げる人は転勤になっても実績を上げ、上げない人は転勤になっても担当替えになっても華々しく実績を上げることはありません。

 私はその違いがちょっとした考え方の違いと考えています。 実績を上げる考え方を持っている人は見ていればわかりますし、実績を上げられない人も見ていてわかります。 人の評価は面談して最初の何十秒で決まるという本がありましたが全くその通り、 私にもわかります。 しかしその本は笑顔の効用と作り方などか続き、それが実績を上げるすべてであるかのように書いていることでしょう。 しかし真実はちょっとした考え方の違いによるもので、実績の上がらない人が考え方を変えると笑顔も自然に出てきます。

 会議で人の評価をしたがる人は『お前が売り上げ上がんないのは口角筋がゆるいからだよ、バカヤロー』と言っているようなもので言われた人は何のことかわからないでしょうし、解ってもそうは思わないでしょう。

 実績の上がらない人は自分が実績が上がっていないこと、自分の考え方のどこかが間違っていること、ひょっとしたらどうすればもしくはどのように考え方を変えれば実績が上がるのかわかっているかもしれません。 素直に変えることのできない自分に嫌気がさしているのです。 そしてずれた考え方で歯を食いしばって頑張りとおし、少しばかり実績を上げて自己弁護しています。

 実績が上がるということは毎日仕事が寄ってきて、それをこなすことです。 それが仕事、誤った考え方に固執するため力入れまくり営業をすれば疲れるだけです。 世の中に困っている人がたくさんいて、それを解決できる技量をもった営業がいれば困っている人は頼んでくるでしょう。 そんなに頼まれても真っ貰わないとというのが営業だと思いますし、困っているけどあんな奴に頼めないは営業不適な考えたかに固執していると思います。

 

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