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会社が大きくなること

ドラッカーが1954年に発表した『現代の経営』は63年前にもかかわらず新鮮でした。(社会科学の論文でこの期間が経過すれば陳腐化しますが) 誤解を恐れずその中の考えを引用すると、大規模企業、中規模企業、零細企業の組織運営(ドラッカーは組織は戦略に従属すると言っています)は連続して変化するものではないと言っています。

当社はこの5年で従業員数が倍になり、退職者もいますので5年前にいた職員は50名程度でしょうか。 50名の会社に100人の新人が増えたとの影響より150人の職員数が会社の風土を大きく変えました。

ドラッカーが例示した例の一つははじめ数人で始めた町工場が9000人の従業員になったとき、大きな工場を建てることになりました。 社長はすべてが見渡せる、つまり9000人が働く一つの工場を主張し、他の役員は危険分散のため複数工場の建設を提案しました。 社長が押し通し、見渡せるよう防火壁もない巨大な工場が建設されました。 しばらくして火災になり、工場が全焼し結果その会社は倒産したそうです。

幹部は『火事でよかった、社長が死ねば何も入ってこないが火事だと火災保険が下りる』と言ったそうです。 その会社では火事になったときの対処責任者は社長で火災発生時社長が不在で消火活動が行われなかったそうです。 その社長がなぜ権限を委譲しなかったのか、業務を細分化して分業しなかったのか書かれていませんが、成功体験は考えることを鈍らせるのかもしれません。

当社でも社長の役割について話題が出た時、責任を担う者という考え方が出てきます。 責任を担うから権限がある、社長の立場に立てば責任問題を回避する、リスクを排除することが仕事になります。 なんでも器用にこなして会社を大きくした社長にとって権限を委譲することは自分より劣る人に任せることを意味するのか、他人は信用できないという不信感からか、そのような組織体制を見たことがないからかいろいろ理由があるかも知れません。

大きな権限があり、仕事の細部まで口出しする経営は韓国映画に出てくる財閥批判をテーマにしたもので顕著です。

違う話としてドラッカーはIBMの工程管理を例示しています。 工程を分割し、作業間で仕事の流れが滞ることがあり、これを改善するため作業者に分割されたパートの前後の仕事を行わせようとしたものです。 これによりIBMの作業工程は飛躍的に改善し、アメリカの不況下にあってIBMが高い業績を維持できたことの理由として挙げています。 このような改善は現在の生産現場でも行われていて、生産工程のデザインの問題のように思われがちです。 もちろんそういう側面もあるのですが、同時に新製品の開発において営業も生産管理の人もエンジニアも一緒になって開発した事例が書かれ、ニーズに合って最新技術が投入され、製造ラインが問題のないようデザインされたメーカーが高い業績を上げたと書かれています。

ドラッカーは生産管理やマーケットリサーチ、組織論の専門家ではありません。 それぞれの専門家はそれぞれの視点でこれらの事例を分析したようですが、ドラッカーは企業の成長のテーマで分析しています。 例示したことが相互に関連し、大企業への発展を示しています。

それゆえ『現代の経営』のこのパートでは零細企業、中規模企業、大企業に分け、発展プロセスに連続性のないことを示しています。

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