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会社経営6

 当社は薬局経営から始まった会社です。 かつて処方箋調剤は病院内で行われ、多くの薬剤を処方することで過剰投薬が問題となり、院内処方調剤の点数を切り下げたため多くの病院が院外処方を発行するようになり、処方箋調剤薬局は乱立し、チェーン化して上場するところまで展開しました。

処方箋調剤を行うと薬局は薬価マージン差を得ることができ収益性が高く大病院の門前の土地は値上がり締まりした。 社会保険事務所に月に一回調剤を行った処方箋を持ってゆくのですが、大手の薬局は段ボール箱数箱を高級車に積んで持ってきます。 だからというわけではないでしょうが業務でヨーロッパ車を使うほどには儲かっていたようです。

厚生労働省は院外処方せんを促進し薬剤費の低減が達成すると薬価マージン差を無くすよう薬価を決め、調剤報酬を減らして薬局の収益を圧縮してゆきます。 一般に制度ビジネスと呼ばれるものは行政の制度変更に従わざるを得ず、事業としての自由度は低いものです。 私は制度微子ネスが社会的に必要であることは理解しても事業としてやりがいを感じませんでした。 2000年に介護保険が施行されると当社も介護ビジネスを始めました。 しかしこちらも制度ビジネスに変わりはなく介護保険サービスが社会に行き渡ると調剤薬局と同様に事業者の利益を圧縮する制度改定が行われます。

私はできる限り早く制度ビジネス以外の事業の柱を作りたいと思いました。 しかし薬局の経営をやってきて他の事業に取り組むことは難しく、ヒト・モノ・カネ・ジョウホウのどれもがありません。 介護事業はフランチャイズ契約のもとに始めましたが契約を解約することで戦略展開に自由度が増し大きな利益を生むようになりました。 この利益が制度変更でなくなる前に何とかしなくてはと思っていたら丁度小規模事業会社のM&A仲介が出始めました。 日本全国で助成金対象となるような小規模会社は数百万社あり、かなりの割合で後継者がいなくて会社存続が危ぶまれるようになりました。

本来商売・事業は何らかの差を埋めることで利益をか得するものです。 石油を消費する日本は油田がありませんが産油国は自国消費を補って余りある採掘を行うことができ、その温度差に利益を伴います。 新たに事業を始めたい当社にとって新規事業を立ち上げるのは至難の業、事業を買えるならそのほうが確実に利益を得ることができます。 仲介会社に紹介を依頼すると医療・介護のビジネスばかり紹介してきます。 本業とあまりにかけ離れた事業を紹介して失敗されては信用問題だと思ったのでしょう。

こちらの意図を徐々に理解した仲介会社は世の中にあるあらゆる事業を紹介してくれるようになりました。 その中から選んでゆくわけですが、これが大変で医療・介護以外の事業分野は事業内容はなかなかはあくできません。

希望すれば膨大な資料が送られてきますが会計資料や出勤簿、不動産の謄本などで業務内容やリスクについての資料は少なく、事業運営のイメージはつきにくいです。 株式投資の判断基準としてPBR(price book value ratio)に近いものが重要な判断基準となってきます。 譲渡価額は純資産の何倍か、もしくはPER(price earnings ratio)譲渡価額は純利益の何倍か、です。 もちろん成長性や競争環境、すぐになくなったりしない事業を選ぶことは当然ですがそもそも将来性のない事業は仲介対象にはなりません。 東京証券取引所に上場する大きな会社のPER平均は15倍前後らしいです。 紹介される企業は零細であり、安定しないので3~10倍程度でしょうか、上場会社と比較すれば大変割安です。

こういった零細企業の社長は一代でその会社を作り上げた優秀な技術者だったりしますので後継者のことまで手が回らなかったというようなケースが多いように思います。 経営管理面ですぐに手当てを必要とすることが多く、逆にそれをこなせば伸びしろがある場合も多いという事でしょうか。 このようにして当社はM&Aによる企業買収に着手しました。

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