[会社運営]
ぶれる営業マン
営業マンが稼ぐ粗利益はたいていの営業会社において本人給料の数倍に達します。 例えば営業マンの平均年収が400万円とするとその3倍、1200万円を稼いで営業マンは最低限の会社への貢献を果たしたことになります。
なぜかと言えば事務職の人件費、管理職の人件費、営業補助職の人件費、事務所の家賃など物件費、将来に備えての投資、将来リスクに対応するための内部留保、その課税原資、実際に営業をやっていて日々管理するのは売上と粗利です。
粗利と自分の賃金とのギャップに『稼いでやっている』と誤解する営業マンは多くいます。 どれくらい多いかというと、ほとんどの会社でほとんどの営業マンがその誤解に陥ると思います。
営業が稼いだ粗利益をどのように配分するか、経費をどれだけ抑えるか、それは業界や業態により大きく異なり、粗利益の〇〇%が営業マンの所得といえる水準は無いと思います。
TKCという税務ソフトを使っていたころ、TKCシステム導入会社で黒字会社の平均労働分配率(粗利益に占める人件費の割合)のデータを見る機会がありました。 TKCシステム導入会社は中小零細企業ですが、薬局の場合70%に及びました。
零細なネットショップ等は設備費等物件費が小さいので人件費、主には経営者の役員報酬や配送業務を行うパート職の賃金にほとんどが分配されますからさらに分配率は高まりますが、営業職がいないのが通常でしょう。
一方自動車産業などは労働分配率が30%と聞いたことがありますが、大型設備の導入や研究開発費が嵩みます。
我々の位置する中小零細企業の営業会社であれば労働生産性が企業収益力や平均賃金、内部留保を高めることになります。
単純化して言えば営業マンの賃金をケチれば営業マンの質が低下し労働生産性が低下します。 そして結果的に営業マンの賃金を上げることができない悪循環に陥ります。 しかし賃金を上げれば生産性が上がるかと言えば本人の基礎能力、社員教育による実践性向上、会社としての高い志、明確な将来ビジョン、管理職による市場把握とそれに適応した戦術の展開、目標の数値化と管理統制など果てしない経営努力が必要です。
それらのために役員報酬を初めとして膨大な経費が必要になります。 営業マンの人質に生産性が大きく左右されない業界であれば、例えば人件費は極限まで削っても広告宣伝費を極大化することが最終利益の極大化になる業界や、システム開発が生産効率のほとんどを決める業界もあります。
当社はこのロジックを理解させるために社内セミナーで『決算書の見方』に関するものも行っていますが、営業マンは自分の苦労と自分の給料との兼ね合いに対する納得にこのセミナーが寄与していると思われません。
残念ながら介護業界の印象は低賃金、相手が生産性を上げづらい高齢者という固定観念からなかなか抜けられないようです。