以前、年代別転職者の年収についてコメントしました。 その詳細資料には2つの特徴が分析されていました。 ひとつは同年代の年収分布です。 例えば20歳代で300万円台40%、300万円未満28%、400万円台28%、30歳代では400万円台28%、300万円台25%、500万円台17%、600万円以上20%となり、50歳代、60歳代ではさらに分布が広がります。
この分布は全産業平均で福祉・介護職に限った平均年収では20歳代275万円(-79万円)、30歳代339万円(-127万円)、40歳代362万円(-252万円)、50歳代409万円(-321万円)となります。()内は全分野平均との差を示しています。
結論としては年別の年収格差が広がっていること、産業別の年収格差が広がっているような分析でした。 時系列の比較がないのと、例示した福祉・介護職で50歳代の409万円というのは介護分野では高収入で、上級管理職クラスではないかと思います。
もともとのデータが人材紹介の事例ですが、国全体の平均年収からは乖離していると思います。 当社の求人職で言えば薬剤師はハローワークと人材紹介では年収で100~200万円の差があります。
福祉・介護職での収入は制度ビジネス、薬局や医療も同様で、仕事の内容もいっていなら報酬も一定の幅で収まるものだと思います。 現に薬剤師の就労場所としてMR、病院、調剤薬局、ドラックストアそれぞれで収斂する傾向があるように思います。 そして厳然とした差がありますし、仕事の厳しさもそれぞれだと思います。
年収を議論するとき最近何十年かのデフレスパイラルについて配慮が必要で、物価が安くなっているから同じ付加価値を生む労働に対する価格は低下するのか当然となります。 労働の価格(相場)で言えば、国境を越えた経済の広がりがあると思います。 今まで千円した投機の茶碗は100円ショップで買えるようになったのは100円で製造して利益が出せる賃金体系の国があるからで、保護関税がなければ当然100円で販売されるようになります。
一見デフレスパイラルと同じ議論に見えますが、あえて視点の違いを見ました。 というのは商品製造コストに占める人件費の話題として考えるなら全世界の人件費が同時に比較されます。 製造コストに占める人件費割合の大きな製造分野、例えば衣料品などは平均賃金の低い国で製造される傾向があります。
福祉・介護職は現場のサービス事業ですから他国の低賃金の影響を受けにくい職種だと思います。 製品は輸入できますが介護サービスを輸入しようと思えば人そのものの移動が必要になります。 国際化の中で海外の看護師を日本で働いてもらおうという動きがあり、看護師不足を解消するような動きになりませんでした。
最初の話に戻って、人材紹介による転職者の年収が高い産業分野で電機・機械があり、先ほどの賃金の国際化の話から言えば電機・機械分野は比較的国際化の波を受けやすい分野で、一見矛盾するようです。
個人的想像ですが、高い年収の人は高いスキルを持つ人、電機・機械の産業分野は高いスキルが製品価格に反映しやすい分野だと思います。 しかし国際的に競争が厳しく、国内メーカーは事業分野のリストラを進めているところで、リストラ対象となった人が高い年収で同業他社に移動しているのではと思います。
これら高いスキルをもった技術者の年収もやがては低下していくのかと思います。 なぜなら高い技術も普及すれば高くなくなってくる、これを陳腐化と呼ぶならその分野の人が多ければ陳腐化のスピードは速いと思います。
日本が世界の中で高い競争力を維持するには人件費も含め製造コスト、サービスコストの低下が避けて通れないことだと思います。 方法として賃金制度を各社が変えるか劇的に円安になるかです。 一時期インフレターゲットが話題になりましたが、政策的には成功しなかったようです。 賃金制度も固定的なため、派遣やパート職を多用して総額を減らしています。 しかしこの方法も限界があるので大きな変革がやがて起こるように思います。