監査役BLOG

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[経営]

ティール組織

 今『ティール組織』フレデリック・ラルー著を読んでいます。 マッキンゼーで10年以上組織変革プロジェクトに従事した人で、本書はベストセラーになったそうです。

私は日本経済新聞の読書欄で読む本を見つけます。 誤解を恐れず私の理解した内容は組織の変遷と組織効率の向上がテーマのように思います。 著者は何度かの組織形態におけるイノベーションを通じて効率的な組織形態が生み出されていくが、昔主流だった組織も並存していて、次世代を担う組織もすでに存在していることの証明に注力されているように思われます。

組織の特徴を具体的な事例を元に解説しているので実証的な記述になっています。 たとえは製品の不具合が予測されたときに現場の担当が大手ユーザーのところに乗り込んで行き『製品の不具合が予測されるので納品された在庫の検品をしたい』と上司の許可も取らず行動した話などです。 少なくとも最近まで主流だった官僚組織では考えられない話です。 その会社は高度成長を遂げ、毎期高収益を計上しているそうです。

そのような行為行動がすべての企業でまねをして上手くいかないかもしれませんが、結果を出しているところに著者は着目しています。

他の辞令では職員の転職の多い業界で定着率が高い組織なども例示されています。 進化した組織が良い意味として業績だけでなく職員の定着率など業績以外の指標で見ているところが新鮮でした。

私は平行してチャンバラ小説を読んでいますが、時代背景は江戸期が主流で、『ティール組織』で進化した組織に当たる組織運営が江戸期の組織でも見られ(小説の世界なので現実にどうであったかは不明ですが)興味が深まりました。

著者が定義する新しい組織運営が現代社会で一般的でない理由は、それが良いと判断があっても採用できない要因があるはずです。 組織運営を思想から見れば多くの宗教や哲学者の教義に散見されているはずです。 知っているけど、良いと解っているけど運用できない葛藤は経営者から現場の職員まであるでしょう。

映画や小説を組織運営の視点で見ると葛藤する主人公が描かれていたりします。

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[会社運営]

企業再生6 信じるからこそ見える

 出向してから65日、月次の試算表(2ヶ月前の業績)がやっと出て来ました。 惨憺たる成績です。 おおよそわかっていたことですが改めて正しい数値を見せ付けられると思い知らされます。 ちょうど出向が始まったときの数値です。

何か手立てを講じてどのように改善したか経営を担当していると早く知りたいものですが、ひと月がおわり伝票がそろって入力され仕訳が行われて計算書にまとまるまでに2ヶ月、出向後の65日でまだ何も対策を打てていません。 やったことは情報収集と分析、対策立案、立案したプランの実施手順(いくら良い方法を考え付いても順序を間違えると結果は伴いません)くらいです。 次の1ヶ月で実行、その結果が出るのはさらに3ヵ月後、その結果が数値に反映するのはさらに2ヵ月後、約半年後です。

2ヶ月掛けて考え、6ヶ月掛けて結果を待つのは相当気が長くなければ耐えられません。 そもそも企業再生は約3ヶ月の短距離走、息をつめてダッシュして6ヶ月待つのは苦しいもので、上手く行くと信じていなければ気持ちが続きません。

商況がこうだからこのような手段が効果的で、この手順で改善すればこの程度の業績になるというのは予測、それをどれだけ信じられるか、少なくとも自分が信じられなければ底の職員に信じて貰うことはできず、信じてもらえなければ改善した会社のビジョンは見えてきません。

自分が実際の業務をやるわけではないので業績の実感はわきません。 真っ暗闇の手探り状態のダッシュです。

なぜダッシュするのか、毎日赤字が数万円と計算されるだけで経営担当としては恐怖にさいなまれ、これが続けばどうなるかとめいってしまいます。 そもそも最悪の状態からはできるだけ早く抜ける事が好ましいです。

もし少しだけの黒字しか生んでいない経営の改善はまだ赤字の垂れ流しがないだけ余裕があります。 それでも機会損失を考えると改善は速いに越したことはありません。 急げは失敗しがちに思えますが、切羽詰って出来る決断もあります。

アマゾンの幹部が書いた本を読んでいたらアマゾンの改善方法をF1レースにたとえて時速200km以上でマシンを走らせながらマシンをチューンナップしているようなものだと表現されていました。 それに比べると時速20キロメートルで走りながら改善策を考えているようなもので私の不安はさておきアマゾンから見ればいかにも鈍いものです。

そこはEコマースと介護業界の違いでしょうか? 介護業界がEコマースに飲み込まれるようになれば、ロボットやAIの活用が始まれば私の経営改善は3日程度で肩をつけないといけないでしょう。 しかし、そこで働く人たちがビジョンを共有できるか疑問は残ります。

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[会社運営]

企業再生5 問題はそれが起こった同じ意識レベルでは解けない。

 アインシュタインの言葉だそうです。 企業再生で出向して64日、たまたま読んでいた本に引用されていました。

事業が立ちいかなくなるのは一般には経営に問題があるからです。 環境が変わって事業収益性が低下したり、外部要因による収益性悪化はありますが、大抵は経営判断の誤りによります。 誤った判断で経営していて徐々に状態が悪化し、職員のモチベーションが低下すれば改善に多大な時間と労力がかかります。

職員のモチベーションを高めようと改善策を出しても元々誤った経営判断の中にどっぷり浸かっていた人にとって別の判断は思いつきませんし、こちらが提案してもイメージできません。

言葉尻を取るようですが、問題を解くには意識レベルを変えないといけないのでしょう。 意識レベルを変える、方法はドラマなどでは高圧的に決めつける場面が多いようです。 信じているものを覆すわけですからかなりのインパクトが必要です。

場合によっては意を尽くして説得する方法もあります。 説得していて『なるほど、納得』という反応はなかなか返ってきません。 相手に喋らすだけ喋らし、その中から問題のある意識レベルでは出てこない意見を取り上げると一気に距離が縮まりますが今期の必要な方法です。

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[事実]

事実を記録する

 ドラッカーが『人は自分の事が解っていない、せいぜい欠点の一部がわかっているだけだ』という考えを残しています。

初めてこのことに触れたときに大変衝撃を受けました。 このブログでも過去に同じテーマで書いています。 衝撃を受けたので自分の長所は何か? 短所は何か? どんな価値観をもっているのか? 何度も考えました。 残念ながら考えて解ることではないという事を理解するにとどまりました。

昔から自分では新しいことを考えるのが得意と信じていてサラーマンになったときは配属先として営業企画を希望しました。 残念ながら叶いませんでしたが。

ドラッカーは明快で、苦手を克服して一流になれない、得意なことを磨くべきだと言っています。 つまり一流になれということですが、人は自分の長所、短所を解っていないのなら何が得意なのかも分かり難いと考えると二つの考え少し矛盾があります。

生きていくうえで自分が選択できることと出来ない事があり、仮に得意な事が明確であって環境がそれを生かすように整うかも疑問です。 仕事などはあてがい扶ちで、たまたま思っている仕事にありつけても上手く行くとは限りません。

私は65歳になって事業の再生は意味のある仕事でやってみたいと思い出したときにその仕事の機会を得ました。 過去に企業再生を行った人の著作を思い起こし、本に著されたものは再生の手際のよさで倒産会社を以前にもましてすばらしい会社に短期間に仕上げてゆくことは社会貢献の大きいことです。 その会社で働く多くの人の雇用が守られ、事業が再生されます。 それだけの会社を育てるのに半世紀はかかるところをたとえば一年で成し遂げるのはすばらしいことだと思います。

話が人の長所・短所からそれましたが、私が普段行っている自分を知る為の方法は記録することです。 私の場合毎年年末に翌年のB5判400ページくらいのノートを用意し、一年掛けて何を考え何をしてどのような成果を挙げたか、この一年のもくろみは何かを書き続けます。 思った事考えた事が事実なら何を判断して行動したかも事実、その結果も事実、人に見せるわけではありませんから脚色する必要はありません。 上手く行かなかったと嘆きや愚痴を書いて反省する必要もありません。 すべて事実なら自分の長所・短所、得意・不得意は克明に記録されます。 1ページに書ける量は1000字程度、ノートのすべてのページに文字が埋まれば40万字の記録になります。

はじめはノートの記録はスカスカで、予定だったり、感情的な記載であったりしましたが、近年は事実が書けるようになってきています。 真実でも評価でも感情でもなく事実が自分を知る上で記録する価値がある事が理解できるようになったのは最近のことで、30年続けた記録の最後の5年くらいでしょうか?

私は本を読むことを薦めます。 それも出版されてからある程度時間のたったものです。 私が本を読むとき図書館で借りることにしています。 著者には申し訳ないですが購入すれば家に小さな書庫が必要になるくらいは読んでいますから本は買いません。 最近出版されて評判になった本は図書館では予約がいっぱいで忘れられた頃に順番が回ってきます。 しかし出版後数年経った本はいつでも借りる事ができます。

最近出版された本は今を知ること、近未来をビジュアルに予測することには向いていますが今の問題や中長期の将来を占う上では時代を経て生き残った真実が書かれた当時の事実として書かれています。

何かを知るには事実を知ること、何かの意味を知ることは真実を知ること、真実の側面の一つは普遍性だと考えます。 事実を積み上げて共通する事実があり、それが普遍性なら行為行動の事実を積み上げて何度も再現されることはその人の長所・短所、その人に普遍性=真実の姿と思います。

ゆえにノートには事実を書かねばならなくなった事ことに気付くのが遅かった私は自分を知るのに年老いてしまったということでしょうか。

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[会社運営]

企業再生4 迷いと決断

 出向して50日が経過しました。 毎朝7時に50日出勤するのは禅宗の修行のように思えるときがありますが、山を駆け巡るわけでもなく机に座りデータを解析し、方針を決める日々です。 つまり何を変えれば業績が改善するかを決めます。 その場合データに信頼が置けないと分析をやり直すことになります。

わずかなデータの誤りを気にせず決断すればよいのですが改善する程度が異なって来ます。 それがある職員の賃金千円の差になれば冷や汗が出ます。

自分の決定に絶対の信頼をおかなければ色々批判されたときに怯んでしまいます。 後に後悔が残り、手直しに膨大な時間がかかります。

再生は将来に向けてのこと、過去は変える事ができません。 日々は過ぎ去り、50日の不都合な過去が自分が関与して経過しました。 残るのは焦りと迷い、結局どこかで決断しなければなりません。 もちろん他人のせいにはできないし、すべては自分の責任です。

迷い続けることは自分の納得の問題かといぶかる事があります。 企業再生で歴史に名を残した人たちならどうしたか、思い出すのは日本航空を再生させた稲盛氏、日産のゴーン氏、日本郵政公社総裁の西川義文氏、パナソニックの中村邦夫氏、それぞれの本を読みましたが西川義文氏が一番印象に残っています。

もともと住友銀行の頭取をされていて多くの企業再生に尽力した人ですが、日本郵政においても大鉈を振るったにもかかわらず政治屋の揚げ足取りで引きおろされました。 しかし『ザ・ラストバンカー西川義文回顧録』にあらわされた人物像は人格高潔で信念を貫く人でした。 再生では淡々とやるべきことを処理して行ったテクノラートといった感じですが、銀行でも郵政でも反対派は多くいる中でやり遂げた実行力は単なるテクノラートではなく決断の人であったと思います。

政治屋に足元を救われてからも改革半ばで頓挫した悔しさや腹立たしさが聞こえて来ません。 金融や企業再生に生きられてさわやかさをかもし出す人となりに思えます。

自分と比較するのも大それていますが関与する会社をあるべき姿に再生してゆくことはテクニックではなく生き方の問題であろうかと思います。 スキルや経験は当たり前ですが足元にも及びませんが生き方の問題なら少しは近づけるのかと思います。

私の場合、日々の迷いから抜けられずデータのせいにしていること自体、生き方にも大きなへ駄々利を感じます。

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