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 およそ組織は企業でも行政組織でも軍隊でも情報の流れは上層に向かいます。 愛読しているチャンバラ小説(主に江戸期)でも典型的な官僚組織である幕府において情報の正規ルートは上方向で横方向には向かいません。 時代が下って第二次世界大戦の戦艦大和は3000人の乗組員の情報は艦橋に設けられた指揮所に集まり、指令が出ています。 指揮所に通じる伝達手段が途切れれば指示は出せません。

現代の大企業でも社長の所に全ての情報が集中し、判断されているところがあります。 各部署の責任者は毎週決められた日時に代表のもとに状況説明に行き、詳細説明を行い、細かい指示を受けます。 おそらく移譲されている権限範囲のことまで指示されている会社があるようです。 そのような企業が前近代的な経営方法と批判できないほどうまく機能している場合があります。 職員の多くは最上位者から詳細指示を受けることでほぼ全てにおいて免責となり、気が楽です。

情報の集中と詳細指示だけであるならメーリングシステムで解決できるように思われます。 実際にメーリングシステムですべての判断を行っている企業があります。 やれば出来るのでしょうが職員数が多くなるとどうでしょうか。 我々の世代は先輩や上司が帰りに一杯付き合うことで愚痴を聞いたりしていました。 業務内容がマニュアル化出来て例外処理の指示を仰ぐことで事足りる仕事ならうまくできそうな気がします。 しかし人のやることですからマニュアル化できないようなやりがいなどマニュアルとメールで解決できないことも出てきます。

米軍の映画を見ていると精神科医などがカウンセリングを行っているシーンが出てきます。 戦闘という極限状態での精神性の維持は難しいでしょう。 アメリカの経営学では権限移譲の話題が多く、情報・権限の上層に集中する官僚機構を否定する研究報告が多いように思われます。 その最も進化したものとして『サーバントリーダー論』です。 平たく言えばリーダーは業務を執行する部下を支える仕事に集中するというものです。 執行者は権限移譲を受け、責任をもって業務執行を行います。

あるホテルで各職員は顧客満足を得るために2000ドルまでの支出を上司の許可なく使えるそうです。 そのホテル(アメリカ本土)に宿泊した人がノートPCを部屋に忘れ、宅急便で次の宿泊先であるハワイのホテルにPCを送るように連絡しました。 そのことを指示された客室員はそのPCを持って飛行機に乗りハワイの指定されたホテルに届け、称賛されたそうです。 この職員は仕事をするうえでマニュアルに縛られることなく顧客満足を最大化できたので、いつもそのように対応できれば帰りに上司と一杯飲みながら愚痴ることもなければ精神科医のカウンセリングを受ける必要も小さいと思われます。

働く人個々人の自由度を大きくすることだけでパーフォーマンスを最大化することは困難でしょうが、働き仕事をすることについて考えるヒントになりました。

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