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写真は『ザ・ラストバンカー』というタイトルの西川善文氏の回顧録です。 帯に書かれた副題は『逃げたらあかん!「不良債権と寝た男」死に物狂いの仕事人生』となっています。 副題の品のなさはともかく、ラストバンカーは金融界にあって最高の尊称だと思います。

私も資金調達で多くの銀行員と交渉しますが、バンカーと呼べる人に出会ったことはありません。 手っ取り早く言えば節操のない『金貸し』といったところでしょうか。

私のバンカーのイメージは取引先の企業を精査し、その会社の成長を促進するため資金投入する事業に携わる人で、金融以外の事業者から見ればよき相談相手で、自社の事業を深く理解し、その成長に寄与する事業者といったところでしょうか。

私が銀行を「金貸し」といったのは資金需要も無いのに『借りろ、貸してやろう』と言ってきて、立場が逆転すれば金利を下げて『借りてください』という人たちです。 介護事業や薬局のビジネスモデルや収益構造に理解が無く、財務諸表だけで健全性を見ています。 理念や将来ビジョンを聞かれたことはありません。

バンカーである西川氏は住友銀行の頭取となり、銀行時代は関西系企業の大型倒産の債権整理に注力した人で、営業としてのキャリアは非常に少ない人です。 敗戦処理の達人ですが、単に改修だけを考えるのであれば整理屋業務になるのですが、倒産企業の業務の存続や職員の雇用など配慮を重ね、整理された側から感謝された人です。

住友銀行を退行してから小泉内閣のときに小泉首相自らの指名で郵政民営化に携わり、初代郵政公社社長に就任して辣腕を振るわれたのですが、鳩山議員のつまらぬ政治屋パフォーマンスに振り回され、民主党が政権をとったときに退任されています。

私が金貸しと思った銀行で特に行儀が悪かったのは残念ながら西川氏の住友銀行の行員だったのですが、かんぽの宿を100億円程度でオリックスに売却したことを国会で追及され、何度も証人喚問に出ておられました。

国会中継で西川氏を見ていて、その表情、所作に卓越した雰囲気を感じ、『この人はすごい人、なぜかんぽの宿を叩き売ったのだろうと』その時は不思議に感じました。
おおよそそのころ国会中継に映し出される与野党のどの議員よりも堂々としていていました。

本書を読んでみて解ったのですが、住友銀行の内情、特に西川氏の使えた頭取の采配の拙さ、郵政公社の内情と体質、鳩山議員に踊らされた報道陣、読んでいて気分が悪くなりました。 もちろん西川氏からみた話ですが、これだけ堂々と書かれて中傷だ、誹謗だと裁判にならなかったわけですから事実ということでしょう。

住友銀行と言えば日本で有数の金融機関、国会議員も国民の代表、それが子供じみた茶番、ごっこを報道機関も巻き込んで行われていたことにこの国に対する不信感を抱きます。 またそのような茶番に乗って視聴率を稼いだ報道機関、少し調査すればわかることですから報道機関が視聴率を稼ぎたければザラストバンカーの特番を組めばよいわけです。 当時の番組輪見ていたわけではありませんが、NHKがそのような特番を組んだ形跡が無い以上、勝手に電波を飛ばして国民から金を巻き上げて恥ずかしくないのかと思います。

若いときにサラリーマンだったころ、このように筋を通す人に仕えて仕事をしたいと思っていましたが、日本の村社会は寿司を通す人の存在を許さないようで、住友銀行が頭取にしたところに懐の深さを感じました。

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