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中国の謎

尖閣列島の問題をはじめ、日中関係は謎に包まれているように思います。 個人的な感情論はともかく、政治・経済そして歴史の中に多くの課題があるように思います。

台湾人生まれで龍應台(りゅう・おうたい)氏が書いた『台湾海峡 一九四九』(天野健太郎訳白水社)を読んで、現在の中国人の考え方の一端が垣間見れたように思います。
氏は1952年台湾高雄県に生まれ、米国留学を経て現在は文化省の大臣に就任されています。 私より1歳年上の方ですが、ほぼ同じ時代を生きてきた者として社会背景の違いに驚かされます。

タイトルの一九四九は1949年のことで、第二次世界大戦終戦の4年後を意味しますが、本書の内容は1930年頃から日本軍と国民党軍の戦い、国民党軍と解放軍の戦いについて、台湾在住の元国民党軍人の取材を記載したものです。

火器で劣る国民党軍と日本軍の戦いでの数万人規模の大きな犠牲は近代戦では考えられないことですが、その後の国民党軍と解放軍の戦いにおいては、戦力を担った兵隊の多くが志願兵や徴発された農民で、それぞれ制圧した都市の奪回における戦いで、都市住民を巻き込む戦闘と殺戮が行われ、それぞれの大きな戦闘での死者は数十万人から百万人を超える規模だったそうです。

一つの都市をめぐっての戦闘で百万人以上の死者を出し、それが同じ国民同士の戦いであったことが想像を超えています。 毛沢東をはじめ、当時の解放軍幹部は自国民の死亡者数について把握しており、その戦闘を指揮していました。 国民党軍が台湾に退いてから私の年代が生まれたわけですが、その数年前まで旧日本軍捕虜は台湾にもいて、帰国を心待ちにしていたそうです。

日本では敗戦から経済復興が始まりだした頃で、私が子供の頃、ニュースで見聞きした中国の政治家の名前が本書にも出てきます。 そのあとの中国を支える政治家は当時の戦闘を支えた幹部の子孫であったりするようですが、一般の中国人や台湾人には初等教育で日本軍の侵略や人民の殺戮は教えても自国民同士の戦いに就いて触れられていないようです。 つまり第二次世界大戦後の長期の教育で憎まれるべき民族が日本であることが刷り込まれたそうです。

中国の現在の政治家がこれを利用しない手は無く、やりたい放題をやっても中国人はなんら疑問を感じないのはそのためのようです。 もちろん長い歴史の中ではどの民族も大なり小なり同じようなことをしてきたのでしょうが、平和ボケしている日本人はこのような国際間の問題に対して政治的判断がしづらくなっているように思います。

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