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会社運営

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自ら動く

私は同業他社や仕入れ先の管理職の人、異業種の経営者と話す機会が多くあります。 ある会社を訪問した時、何か質問すると社長をはじめ幹部の人が並んでいて質問の内容に的確にこたえられる立場の人が社長の方を見ています。 社長がその人に答えるよう指示を出すまで待つか、しばらく沈黙があればその幹部の人が答え始めます。

逆の場合、つまり当社も幹部が並んでいて対峙しているとき、当社に向けられた質問に対して一番的確に答えられる人がすぐに話し始めます。 誰が的確か判断がつかない時は私が答えるか誰かを指名します。

相手から見れば私はあまり話さない経営者か会社のことを語れない経営者に映るかもしれません。 こちらから見ると相手会社の社長はワンマンということになります。

会社が一貫性をもって事業運営にあたり、目指す方向性がその事業分野で妥当な場合、職員が皆目指す方向に向けて考え、工夫し最善を尽くす組織が効率が良く、高い業績を上げるものと思われます。 最近話題になった企業ではリッツカールトンホテル、企業の方向性はクレドに集約され、クレドに沿って多くのエピソードが紹介されていて、研究したわけではありませんが紹介する経営書が多いところを見ると業績は良いのでしょう。 東京ディズニーランドも良く紹介されています。

その次に業績を上げられる組織はトップが強力にリーダーシップを果たしている場合です。 そして職員が皆トップの指示に完全に従う組織です。 世間にはこのタイプで成功している企業が多くあるはずですが、私が話題として聞くのは日本電産の永守社長、ニッサンのゴーン社長、京セラの稲盛会長、スズキ自動車の鈴木会長などトップの個人名が話題になる企業です。

どちらが優れているというわけではありませんが、最近注目されるのは前者の方と思います。 そして当社もそれを目指しているわけですが、それは何かを参考にしたわけではなく会社の規模が大きくなる中で管理職を育てなければならない時期が長く続いたこと、私自身、指示を出すことで人を育てることを良しとしなかったことによります。

職員が10人いてそれぞれ現場を50件抱えていれば500件の現場があり、それを管理することはできません。 できることは報告、連絡、相談、一方私にはそれぞれの業務について指針を出すという仕事があります。 報告、連絡、相談を受けているとその人が何を気にして何に注意を払っているか見えてきます。 もし大きく欠落している視点があれば質問をします。

たとえば売上高を最大にすることに注力している人は利益率をおろそかにします。 「利益率についてどのように考えているのか?」と質問します。 答えを聞くとなにを考えているか透けて見えます。 できることをやっていないことにより利益率が低くなっているならこの質問だけでその人は利益率を考えるようになります。 「利益率を上げる工夫をしろ、例えばこういうふうに」と言ってしまうのは簡単な場合も多いですが、本人が考えることが重要なのでそのように言いません。

各取引の利益率一覧を出せば、利益率の低い部署は何か考えるでしょう。 そのような仕組みも必要になってきます。 言わなくても解ることは言わない、しかし欠けている視点があれば質問することを繰り返すと相手から「いつも謎かけをされていて、意図が見えない」と言われてしまいます。 つまり質問の中には私がこうした方が良いのではという意図が準備できていない場合があり、結果に不満ならその結果が導き出されたプロセスについて質問します。 こちらもよくわかっていないわけですから。

このようなやり方を人に説明するとき、「私は権限移譲を図っています」と表現しますが完全な説明ではないようです。

最近読んでいるアドラーの解説で「「ほめるな 叱るな 教えるな」というのがありました。 読んでいてこれが近いのかと思っていますが、会社という組織には生い立ち、風土、規模、事業ドメインなどあり、その会社が成長期とか現在のステージもあり、バリエーションが多様です。 何が一番良いのか、それはその組織が何を目指すかにもよりますが、仮に規模拡大期であればそれに沿ったやり方が別にあるかもしれません。

私もあまりほめることはしません。 『すごいな、よかったな』と共感することはあります。 『教えるな』はその通り、結果を求める質問ではどのようにすれば結果が判るか、調べる方法は教えることがあります。 しかし答えそのものを教えてしまうと次に同じ質問をしてきたときにまた教えなければなりません。

このように書いてくると私が何か皆より優れているような印象を持たれるかもしれませんが、逆で年齢や経験を除けば皆私より優れているように見えてしまうのが事実です。 若い人の考えは新鮮で、それぞれの集中力・達成力にも驚かされることが多いのです。 私としては感心ばかりしていては仕方がないので、自分に取り込み彼らと同じ視線で話ができるように努力するしかないのです。

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