監査役BLOG

カテゴリ

会社運営

[会社運営]

権限移譲

会社運営で権限委譲が話題になります。 当社においても権限移譲は進めてきましたし、知る限り他社の権限移譲より委譲が進んでいると自負しています。

写真の書籍は米海軍原子力潜水艦艦長の大佐が潜水艦内の軍事行動において権限移譲を図った記録です。

一読してまず印象に残ったことは攻撃型原子力潜水艦の乗員が135名もいることです。 当社はやっと110名、それを上回る人員が海底に長期間潜む潜水艦内にいて、その艦長が権限移譲を図ったというところです。

そもそも原子力潜水艦は武器の中でも大変高価な物で、原子炉まで積載していて操船が複雑で多くの戦闘員のチームワークが必要とされるものだそうです。 それゆえ命令は絶対で、手順は厳守されるのですが、その潜水艦で権限移譲を図ることが奇異に思えて読んだ一冊です。

海軍内でも成績の悪い潜水艦の艦長に就任した筆者が権限移譲を図るわけですが、具体的には部下の休暇願の承認を艦長が行うところを下士官に委譲したことが皮きりで書かれています。 軍隊は米国においても大変官僚的で組織の頂点にいる者に多くの権限を集中させています。 休暇願なら権限移譲も許されるでしょうが、実戦形式の演習であっても各科の責任者が判断し、これから行う事を艦長に報告し、実行するというものです。 たとえば魚雷を発射するとかも艦長の次の役職者が判断し、報告してゆきます。

艦長は自分がいなくても戦闘を維持できる組織づくりを目指したのですが、常に報告を受けて状況を把握しますが、もちろん命令を出さないわけではありません。 二つの興味深いエピソードが書かれていました。 一つは艦長に就任して権限移譲を進めようとしたとき、原子炉を緊急停止する訓練で、バッテリーで推進する速度を全速力の1/3から2/3にあげる指示をこの艦長が出しました。 副長が操舵手に命令を復唱しましたが操舵手は機関担当に指示を出しません。 不審に思った艦長が「なぜか」と聞くと副長は艦長の命令を復唱するのは当然と答え、操舵手は2/3の速度設定が選択できないので機関に指示を出せないと答えたそうです。 艦長は知識の不足からできない命令を出したことになります。 艦長はこれを機会に自分が命令を出すのは極力止めようと思ったそうです。

もう一つのエピソードは権限移譲が十分に定着した時、艦長がレーダーを見誤って後退の指示を出した時に航海長が『艦長間違っています』と指摘したことです。

皆が権限を委譲されると自らの責任において臨機に対応を求められるので、モチベーションが上がるのはもちろんの事、いろいろ想定して勉強をしなくてはなりません。 乗員の向上心が高まり昇進試験の昇進率は格段に上がり、演習の成績も何度もトップを取ったそうです。

7つの習慣で有名になったコービィ博士も見学のために乗艦したそうですが、軍隊ですらこんなに変化しているのに日本の企業において身内の覇権争いなど組織運営の時代錯誤を感じました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

上に戻る