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共感する力

 横浜市の林文子市長は「共感する力 カリスマ経営者が横浜市長になって分かったこと」というタイトルで出版しておられます。 横浜市は全国で一番大きい市で、その市長をされていますが、女性首長は日本では意外に少ないそうです。

 氏の経歴は個人的にはすごいの一言に尽きます。 高卒でOLを3年ほどしてから自動車の販売会社でセールスを行っておられたそうで、最初のディーラーでは入社後トップセールスを10年、それだけでもすごいことですが、自動車販売会社の社長に抜擢され、同業の自動車販売会社の社長を何社か歴任、ダイエーの再建に代表としてかかわった方です。

 それだけの逸材ですから市長への出馬要請は当然としても民間から行政に転じてなお多くの改革改善を成し遂げたことは凄いことだと思います。 氏の市役所の風土改善の考え方としておもてなしが何度も登場します。 詞だけをとらまえればセールスの手法を行政サービスに取り入れたことになりますが、効率一辺倒の役所仕事に対する批判として電話とメールで効率的な情報伝達よりも会って面と向かって話をすることで信頼関係が増すことがより効率的な行政サービスにつながることを説いておられます。

 このエピソードで思い出したことがあります。 あるフランチャイズに加盟していたときスーパーバイザーから連絡が頻繁に入ってきます。 『面談したい 』というのが用件ですが、面談して情報を得ようとしているだけで情報の提供はありません。 何か資料は持ってくるのですが、役に立つものはなく、それをネタに当社の情報を取得しようとする意図は見え見えです。 そこで用件があるならメールにしてほしい、情報をくれるというのならメールで送ってほしいと伝えました。

 先方の役員がそれを聞いていて何事かとスーパーバイザーを叱ったそうです。 もちろんメールにしてほしいというのは君の情報に何の期待もしていないというメッセージです。 さらに言えば人としても魅力に欠けていたのであって楽しいことはありません。 上司の役員が私の感覚までたどり着いてくれれば改善も図れたのでしょうがそうはなりませんでした。

 現在はそのフランチャイズを離脱し、そのフランチャイズ自身が展開しているといううわさも聞きません。

 林文子氏の話に戻り、市長は公選され一人何千人といる職員の中に入り、権限を行使し、責任を果たすわけですからそれはもう大変で、低姿勢でお願いしても権力を傘に着て力押ししても役所の風土をセールスの風土に変えるのは至難の業に違いありません。 メールではなく面と向かって話をし、信頼・尊敬・善意・ビジョンを理解されなければ職員といえど誰も思い通りに動かないでしょう。

 タイトルの『共感する力』は 自らが相手に共感し、相手は自分に共感するよう努力することに尽きると思います。 副題の『カリスマ経営者が・・・・』はカリスマであるがゆえにできたことのようにとられ、書かない方がよかったことと思います。 記述の中で氏は細かな努力を徹底して継続してきたこと、職員褒める、冗談を言う、先に挨拶するなどです。 それをカリスマとかたずけられたら氏は悲しくなるのではないでしょうか。

 多くの職員、お客様である市民、いろいろな考えの人がいるわけで、皆が皆支持しているわけではないでしょうが、少なくとも憎しみの対象にはなりにくいのではないかと思います。

 私は母親が存命で毎日安否確認の電話を掛けます。 母は90歳を過ぎて認知もなくしっかりしています。 もともと私とは反りの合わない人でしたが、それを引きずっていても仕方がないと思いつつ電話をするといきなり質問攻めにあいます。 そもそも電話を受けてとたんに質問するのはやめてほしい、とお願いするのですが「すまない」と言いながら次にまた質問になります。 認知であるからそうなるのではなく、昔からの気質で質問に対する答えは毎回同じです。 林市長のように母と共感することができればもう少しましな会話が成り立つのでしようが肉親だからか仕事でないからなのか割り切れません。

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