監査役BLOG

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大風呂敷

事業の将来を考えるときに具体的なビジョンを描きます。 そのためにその事業のマーケットはどれくらいか、調査します。 海外市場を考えないとして、大阪府内に終始するとして、条件を絞り仮に200億円/年のマーケットとすると売り上げ目標10億円/年(5%)と考えます。

粗利率30%の商売であれば10億円に対する粗利は3億円/年、人件費率(労働分配率)70%であれば2億1千万円が人件費、一人当たり人件費が500万円とすれば42人の会社になります。 営業員が半分の21人であれば売り上げは4百万円/月・人になります。

一人当り月売上4百万円が厳しければ、350万円/月が見込める水準であれば営業員は21人から24人、販売方法などを工夫して生産性を上げて何とか事業に着手できるシュミレーションを描きます。 この事業でさらに工夫した分が最終利益に残るとしてこの事業に着手した方がよいでしょうか?

新規事業を検討するとき検討項目は多面的です。 旬の事業か成熟事業か?、競争が激化する事業か=新規参入が容易な事業か? 事業リスクは高いか?(クレームが多い、貸し倒れが多い、制度変更で消滅する可能性がある等)ほかにもいろいろあります。

思いつくものをすべて検討し、それでもやるぞとなったら私は事業シュミレーションを引き直します。 大阪以外にも進出する、ビジネスモデルを変えて効率化を図り収益性を高める、売上経常利益率5%以上になるよう考える、そしてもし7%が視野に入れば、売り上げ規模が100億単位で狙えるなら事業化を前提に検討します。

売上経常利益率が7%以上、売り上げ規模が千億円の単位で狙えるなら大企業が進出する可能性が高いでしょう。 もしくは競争が苛烈になって利益率は低下するかもしれません。

社内で新規事業を検討するときに売り上げ規模10億円/年以上を3年以内といえば、しかもサービス業でとなればほとんど腰が引けてしまいます。 私は大風呂敷を広げるつもりはありませんが、実験性のあるシュミレーションが大きすぎるもの、小さすぎるもの、マーケットが膨張しないもの、縮むものに関心がありません。

 

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ネットワークの威力

 AIの開発がマスコミをにぎわしています。 IBMのワトソンに搭載されたAIソフトが米クイズ番組でチャンピオンに勝った、画像認識で猫を判断した、「へえー」で終わる話が、囲碁のチャンピオンに勝ったとかがんの診断をワトソンが行った、AIが作曲した曲がヒットチャートで上位にランクされた、日本の銀行の電話相談窓口のオペレーター100人がAIに変わった、当社の事業で言えばケアプランや薬剤師の服薬指導などもAIにとって代わることは理論上は可能でしょう。

 もっと言うなら町のかかりつけ医や税理士も弁護士も同様で、職務の全部ではなくともだいたいは可能だし、実際代替が始まっています。

 個々のデータを膨大なデータと突き合わせ、一定の結論を導くことは間近な話題でしょうが、代替が遅れるのは 結果を伝えるのは多く場合は人、その部分は当面は人が行うことになるように思います。

 どの事業分野にも業界内でネットワークを築く人がいます。 人は基本的に合理的な判断をすると思われがちですが、その人の外から見ると必ずしもそうではありません。 その人の価値観に沿って行動するから社会平均の合理的な判断から外れている場合が多いと思われます。 そのように価値基準がバラバラの人のネットワークを築くことは大変です。

 たまに情報をたくさん持っていて、情報の小出しでネットワークを築いている人がいます。 そのような人はやがてネットワークから退場するでしょう。

 大昔の村社会のネットワーク、村八分が実際に行われていた社会平均の価値観から現代は多様性が広がり、情報へのアクセスも開示された情報ならすぐにできます。 逆に開示されていない情報、インサイダー情報はどんどん管理が厳しくなって一般に知る由もなくなってきます。

 したがってネットワークの持つ現代的な意味は村社会と異なり、多様な価値観の調整ができることになってくるでしょうか。

 AIが普及期に入って多くの作業から人が解放される、つまりは消滅する仕事が増えて人が行う新たな 仕事が登場してきます。 AI普及の書籍はたくさん出ていて、仕事がなくなることを予測しています。 新たな仕事も予測されていますが、社会平均の価値観がどのように変わり、ライフスタイルがどうなっていくということは示されていません。

 SF映画でも未来に登場する車やロボットについてそれらしいものが登場しています。 服装はイメージできていないようです。 食事や人間関係についてもうまく表現しているものはないように思います。

 AIが仕事を奪うことに目を奪われるより、消えゆく作業から解放された後の生活はどのようになるのか、そこに想像力を働かしてみたいです。 

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歴史

 会社の歴史、少なくとも自分がかかわってからの社史をまとめようと取り掛かりました。 約二週間、他のことは何もせずに残存しているB5判のノート、産業能率大学の考案したノートで400ページくらいあるノートを毎年使っていますが、ほぼ全ページ書きつくしているものを13冊読み、要約を作成しました。

 ノートに書くことは、予定、起こった結果 、悩んだこと、考えたこと、忘れてはいけないこと、私は元来記憶力に問題があるのでノートを多用するようになったのですが、忘れないため、書いて忘れてしまうため、書きながら考えをまとめるため、いろいろな目的でノートに書いています。 一つ判ったことは読み返すために書いていなかったということです。 だから10年以上前に書いたことは何を意味しているのかさっぱり分かりません。

 さらに具合の悪いことは問題や課題についてのみ書かれていて、何を決めたのか、どうしてそのように決めたのか、肝心なことは何も書かれていません。

 ドラッカーいわく、問題に集中してはいけない、貢献に集中する のだと、私の場合ノートに関しては問題に集中している様です。 つまりはこの18年間、社内外で起こった問題のみに集中していて貢献することにそっぽを向いていたように書かれていることです。 在籍期間仕事に情熱を注ぎ、それなりの成果を上げてきたつもりですが、残っていた足跡は失敗の話だけだった、それを二週間も読み続けると全く嫌になってしまいました。

 今度は同じ期間の財務諸表をグラフにしてみると、輝かしい成長がグラフの右肩上がりのカーブに描かれます。 18年間で赤字が一期だけ、前年数増収で、かなりの期が増益となっています。 全く輝かしく誇り高きグラフ、思わず見ほれました。 もし経営学のテキストで優良企業の 財務の推移をグラフで掲載するならうちの会社は最もふさわしいと思うほどです。

 グラフを多用したプレゼンを全社員の前で行ったら聞いていた役員が『ねむたい、わかりにくい』とのだまいます。 私の18年間の誇りが音を立てて崩れ去ります。  『一体どこが眠たいねん、言うてみい』心の叫びもむなしく別の役員からは『そんなことは誰も関心無いで』、もう完全に打ちのめされました。 『ええい、しゃらくさい、そこまで言うか! 俺はもう辞めてやる』と心の中で毒づきながら『一体どうしたら皆に社史が理解されるのでしょう、教えてください』と下手に出ます。 自分で自分が情けないですが、他の取締役もバカにしているのではなく親切心で言っています。 それはよくわかるのですが、『ちょっと笑いながら言うの、やめてくれる』とまたもや心の中で毒づきます。

 日々一緒に経営のことを考える役員たちは社内でも一番気脈の通じる仲間のはずであるだけにここまで感覚に落差があったのか、あ~ 情けない。 しかし、仕事なので『覚えて折れ、後でほえ面かくな、俺のプレゼンで尊敬を一身に集めるぞ!』と 気合を入れなおしました。

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違和感

 最近入社した若い男性薬剤師は『社長は今日何をしたか?』と会うたびに聞かれます。 朝何時に起きて、会ったその時間までの詳細な行動です。 私はあまりいい気はしませんが、出来るだけ正直・正確・詳細に報告します。 質問者はそれに対して一切コメントをしません。 コメントを控えているというより単純に『そうなの』と思うだけのようです。 それが一般的でない行動でもコメントはありません。 例えば私はだいたい9時から10時の間に寝ますが、目覚めるのは3時頃、4~5時に離床します。 起きてからコーヒーを飲み、ストレッチ、筋トレを行い、新聞や本を読みます。

 私にとって朝は考えるのに最高の時間で、スピーチの原稿や経営の方針などを考え、A4の紙に鉛筆でまとめたりします。 一度書いたテーマがそれで完成ということはなく、翌日も書いたりします。 A4一枚1000字程度、前日に書いたものを見ないで何度も書き直します。 たまにまとめて以前に書いたものを見ると稚拙で実用に耐えません。 4~5回書き直すとユニークで論旨も通ったものに仕上がる時があります。 会議で発表するとすぐに反応する人は一般に少なく、がっかりします。 しかし、数日後、数週間後、数か月後、数年後に『あの時こう言ったではないか』と指摘され、ちゃんと理解し覚えていたんだと感心します。 私はあまり評価されなかったのでその後も何度も書き直し=練り直し、修正後のものを発表して実行しています。

 逆に自分の周りで起こっていること、他の取締役の発表された意見に反対意見は思い当たらなかったが違和感を覚えるときがあります。 その場で質問できれば良いのですが、何を聞いたら良いかわからずそのままにしておき、その取締役はそのまま実行し、相当時間が立って頃、結果に驚くことがあります。 思っていたより良い結果であったり、イメージと違った結果になったりしたとき、『あの時こう言ったよね』と問いただします。 それは最初にプランを聞いたときできなかったイメージがだんだん固まってゆき、それが出てきた結果と異なったということです。

 では最初にイメージも共有できなかった会議で提案を決めてしまったことは正しくなかったのか? 難しい問題です。 イメージを共有できるまで議論すると時間がかかり、決定が遅れてしまいます。 イメージもなく決めることはリスクを伴います。 よほど重要な問題でない限り、イメージの共有がなくとも懸念を表明して決定してしまいます。 そして不都合があれば途中で修正されます。 不透明なことに時間を費やすより、実行して姿が見えてきてから修正したりするので、最初のプランがベストではない場合が多いです。 ベターでもグッドでも良い、何もしないよりやった方がよい、結果悪い提案であって、提案時に違和感を感じなければ己の不明を嘆けばよいと考えています。

 新聞を読んでいたり、日常で違和感は多く感じられます。 経済雑誌を本屋で見るとタイトルが時代を表していると感じるときがあります。 記事を読んでみると大したことが書いていない場合が多いです。 したがって私は経済雑誌をほとんど読みません。 これら雑誌の記事のタイトルは多くの人が違和感を感じるイメージと現実のギャップをうまくついているのだと思います。

 最近本屋に行って3冊経済紙を買いました。 『おや!』と思ったタイトルの記事もほとんどが知っている事だったり、私がタイトルにつられたということは私の違和感も平均的で、雑誌が廃刊にならないのは記事の内容にたまに『おや!』が『なるほど』につながることが書かれているか、私が理解していることは実は一般的に『なるほど』ということなのかどちらかと思いました。

 私が会議で練りに練ったプランを提案して、賞賛を受けなくても雑誌のタイトル程度には斬新で『おや』、『なるほど』の提案かもしれないと安心しました。

 

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結婚相談所

 当社は結婚相談所の事業に乗り出しました。 オープン前ですが、株式会社上六調剤薬局結婚相談所『アイ ドゥ』です。

 社内外に公表し、ホームページも立ち上がり、噂にもなっています。 お世話になりたいという話もありますが、なぜ薬局や介護事業を営む会社がその社名のままで結婚相談所を運営するのか、という疑問を抱く人が多いです。 確かに業界的には連想しにくい事業かもしれません。

 先日二人の薬局長が薬剤師の服装規定を作りました。 私ども薬局においても薬剤師の業務は何か、という話題はことあるごとに出ていました。 処方箋指示通り調剤するのは当たり前、患者様の疾患治癒にドクターととともに専心する職業ですが、患者様から見た調剤薬局は『商売だろう、笑顔で接しろ、客を(患者をではなく)待たせるな、薬のことをちゃんと説明しろ』とう声が聞こえてきます。

 信頼感があって初めて成り立つ商売、薬剤師に調剤権がありませんので薬が効くか効かないか、副作用があるかないか、は処方権をもつ医者の 責任が大きいですが、日常生活の様子を聞き、薬を飲むときに一緒に食べたり飲んだりしてはいけないものを注意したり、服薬後の副作用として眠気が出るものは車の運転を控えるように注意するなど多くのやり取りがあります。

 薬局で薬剤師の動きを見ていて服薬指導(薬をお渡しするときのやり取り)は緊張の一瞬です。 一般にドクターは権限が大きいですが薬剤師の権威は社会的には低いように思います。 医者の役割は疾患の診断と治療方法の決定、 疾患の治癒は多くが服薬によります。 ここでの説明は重要で治癒の効果は大きく影響を受けます。

 そこで薬局長は清潔でカジュアルでない服装を薬剤師に求めたのが先ほどの服装基準です。

 つまり薬剤師は接客に細心の注意を払い、患者様に指導内容への 理解を深めることが使命の重要部分となります。 介護の営業も同様の服装基準を設けていますし、ロールプレイイングで接客内容の点検を行っています。

 このような事業を行っていると当社の強みは接客時のコミュニケーション力が大きいと言えます。

  結婚相談所も同様で、結婚は人生の大きなイベント、そのマッチングを他者に頼る人は出会いが少ない、自分の評価がずれていて自分の強み・弱みを誤解しているなど理由があるわけですから、お客様とのコミュニケーションが重要になってきます。

 つまりは調剤薬局と同質の役割を担う事業と言えます。

 中には『結婚相談所は儲かるの? 』と質問する人もいますが、もっともな質問だと思います。 事業とボランティアの違いは営利につきますので、今更『金儲け?』との批判も意味がないように思います。 『結婚を商品にするのか?』と言われれば人を幸せにする仕事、夢を事業の目的にしているわけですからと切り返せます。

 どのような事業でもそれが反社会的なものでなければ社会貢献を果たしていると信じています。 貢献の大きさが利益に反映し、経営の仕事は貢献を利益に導く仕組みを考えるのが役割です。

 厳しい競争関係にある牛丼業界は安く、美味く、早い食の提供という貢献を果たすべくしのぎを削っています。安ければよいと原価を割って提供すれば一時的に顧客は好感しますが、事業を継続できずに廃業に追い込まれます。 底の雇用はなくなり、美味い安い、早い食の提供はなくなります。 店員の対応が良ければ、店の床がきれいであれば、食器がそれなりのものであれば、割箸が良ければ牛丼を食べたお客様は味、スピード、値段以上に好感を持ち、リピーターになるでしょう。

 複数事業を営む多くの企業においてその組み合わせは大抵納得のゆくものです。 医療介護業界で医療法人が高齢者施設もケアプラン施設も福祉用具の取り扱いも行っているところがあります。 なぜそのような組み合わせをするのかあえて聞けば顧客の囲い込み、個々の事業品質が低く囲い込みの外から依頼のない場合は顧客にとって囲い込まれるメリットは小さいものになります。

 良い事業で外部からも評価されていれば囲い込みをしなくても流行っているもので、顧客はよく見て、正しい評価をしていると思います。 もちろんそうでないのに流行っていて、違法行為を平気で行い、顧客のわがままを聞いて評判をとっている事業者も散見されます。

 よそはよそ、当社は同業を評価するのが事業目的ではありませんから、取引先の選択において最大限調べて、コンプライアンスは当然ながら取引関係において高い倫理観を持ち、 取引条件の良いところを常に探しています。

 個人的ではありますが、90歳の母がある証券会社の担当に投資を進められ、いくつかの投資がすべて大きな損失を出す結果になりました。 そのグループの金融機関との取引を控えることになりました。 証券会社と銀行は同じグループでも別会社、しかしグループの体質は似ていると思います。 

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経営者の役割

  経営者の役割は多岐にわたりますが、多くの経営者がすべての役割を果たしているわけではありません。 業種・業態、企業規模、幹部の資質、経営状態によっても経営者の役割の優先順位は変わってきます。

 中小企業が規模拡大を目指しながらほとんどが規模拡大を果たせません。 何百万もの法人企業がある中で上場を果した企業は数千社、零細企業の新陳代謝を考えれば千分の一が規模拡大を果たせることになります。

 もちろん規模拡大を目指さない企業も数多くあり、一定の利益を長期にわたって 計上する老舗もあります。 そもそも企業の目的は生命体と同じで生き抜くこと、継続して存在するには安定して利益を上げ続けなければならず、規模拡大は有効な方法です。

 営業出身の経営者は自分の特技が営業なのでひたすらトップセールスを行い、販売増に注力します。 人事出身の経営者は採用、教育、賃金制度に関心がわくでしょう。  企業の構成要素に人材は大きな役割を占めているので売り上げを伸ばさない時にも優秀な営業を採用し、社内教育でスキルを磨かせれば販売が増加すると考えがちです。

 しかし企業の規模拡大に対する課題は販売力、人材、社員教育、販売する商品力、社風、財務、ひょっとしたら社名の良しあしなどいろいろなものがあり、経営者がすべてにおいて熟達しているわけではありません。 専門スキルを持つ幹部にそれぞれの業務をゆだねて行うのが一般的です。

 いくら財務のエキスパートがいて、金融機関との折衝力があっても今投資すべきか、投資するとすればいくらファイナンスが必要か、その判断は経営者から外しがたい役割になります。 投資は将来予測、現状を分析していま増員すれば二年後に戦力化が図れ、扱い商品は五年以上ライフがあるので増員した社員が三年以上利益を稼いでくれる、といった予測です。

 これらの予測はすべて現状の精査により行われ、データ分析を積み上げてゆきます。 たとえばプロ野球のシーズン前の優勝チームの予測に似ているように思います。 株価予測等も開設を読んでいるとよく似ています。 近未来は近過去が決めるというものですが、それらの予測は外れることも多いです。 仮に当て続けることができて何年も予測を当て続けて億万長者になった投資家は稀です。

 数年前に香港に行き、投資ファンドのCEOからプレゼンを受けたことがあります。 香港訛りのクィーンズイングリッシュは難解でしたが、リーマンショックの前後で50%以上の利益を稼いでいました。 私は一体何を根拠にリーマンショックい直前にすべての投資を引き揚げ、ショック直後に底値で株を拾えたのか聞きました。

 彼の答えはアメリカの有名な非農業部門での雇用統計、建設受注残等シンプルなものでした。 しかしこの種の予測に登場する指標は手を変え、品を変え聞いたこともない指標が登場します。 学術論文でもそうですが、結果に見合った指標を繰り出して大発見のように言われてもその瞬間はそうであっても再現しなければ科学的ではありません。 つまり発見であっても経済理論の発明ではありません。

 香港の例はごく一般的な指標を組み合わせ、それを見抜いたところに凄さを感じました。 優れた仮説を立ててその仮説に従えば指標はこのように動くだろうと予測したのです。 つまりあらかじめ立てた予測とその予測従えば指標はこのような動きをするという仮説が優れていたのでしょう。 ボードにマーカーで書いてせっめいしてくれたものは簡単なグラフで、難解な数式ではありませんでした。

 近過去の積み上げに対して仮説を立て、指標評価の方法変えるだけで見事に予測した例だと思います。 そう考えることができたのはアメリカの住宅バブルがいずれ弾けるという予測を持っていたことにほかなりません。 香港の住宅事情は厳しく、マンションなどは東京より高い価格になっています。 想像ですが不動産取引についてはアメリカより香港が優れたマーケット感覚があるのではないでしょうか。

 将来予測について近過去の分析以外にあるべき姿を追求するというものがあります。 この商品やサービスはこうあるべきだ、これが理想というものです。 それに向かって突き進む経営者がいます。 岩いる熱い人です。 アップルのジョブズはこのタイプの経営者と思います。 近過去の分析より予測される近未来よりより遠い未来を予言することができる場合があります。 しかしすべての商品やサービスが経営者の描く理想に向かうかどうかわからず、違うコンセプトとして発展する場合も多くあります。 自動車では自動運転の話題がにぎわっていますが、そもそも人が移動しなくなれば自動運転の車はそれほど売れなくなるでしょう。

 ドラッカーはすでに起こっている未来を見つけることを勧めています。 これは現実的で経営に応用できます。 気づくかどうかはその人の感性、アップル社の製品は革新的であっても技術的には完成されたもの、電話でネットに接続できればというのはドコモがすでに行っていたものでした。

 近過去の分析や仮説を立てることやすでに起こった未来を見つけることそれらの複合で経営者は基本方針を立てるのですが、出来るだけシンプンに構成しなければ少しぶれた時に答えは大きくぶれることになります。

 

 以前香港

  

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人事考課

 人事考課の季節がやってきました。 全従業員の夏の賞与と昇給の査定がこの時期は同時に行われます。 私は手続き上全従業員の査定を承認しなければなりません。

 個々人の日々の活動について解るわけがありません。 したがって各部署の責任者の裁定を見て、違和感のある人の理由を聞きます。 『AさんはBさんと同じ賞与ですね、Aさんは何度かトップ賞を取っているはずですが?』、『賞与対象期間の二人の売り上げ、稼いだ粗利はほぼ同じです。Aは人間関係に優れていてそれは月末の昇給査定で反映されます。』、もちろん賞与対象期間6か月の売り上げ、粗利の数値を出して説明してくれます。

 私がチェックするのは個々人の評価が正しいかではなく評価者が客観事実に基づき緻密に評価しているか、につきます。 個々の評価がいかに客観数値に基づいていても担当現場の違いもあり、正しい評価は明確な基準があっても『神のみぞ知る 』ことになるでしょう。

 私が頭を悩ますのは各部署の管理者です。 上位管理者の賞与、賃金は私が決めざるを得ません。 毎年全職員の年収一覧表を取り寄せ、相対評価をします。 これは労働の対価が何によって決まっているか、直感を磨いています。 年収ベースで何倍もの差がつく理由は何か、責任の重さ、使っている資格、世間の相場、知識・技術スキル、経験、労働に伴う苦痛、いろいろな要因で年収が決まっていることが解ります。

 取締役の場合、一番に責任の重さがあるでしょう。 それゆえ権限も大きく、権限を行使しているかどうか、権限を行使することは何らかの決定を下しているわけですから結果が現れます。 決定事項が少なければ担当業務は平和であったことになります。

 抱えている案件が多いから優先順位をつけ、業務処理を円滑に行い、現場にストレスを抱えていないか、平たく言えばうまく仕事をこなしているか、これは周辺部署の噂でわかります。 うまくこなせていなければ取締役の関与していることは重要性が高いので陰口が耳に入ってきます。

 しかし人気で評価するわけにもゆかず、陰口をたたかれた取締役の業務執行を観察します。 説明責任をうまく果たしているか、説明が下手であればいくら仕事をうまくこなしていてもクレームが出てきます。

 最近気になるのはパーフォーマンス、きちっと挨拶している、いつも笑顔である、相手の話を誠実そうに聞いている、激怒しない、わからないことでも意思を明確にする、私以外は具体的業務を執行しているわけですからここのパーフォーマンスは重要です。

 しかしこの部分は上手い、下手の明確なところ、世間話がうまいだけで好感度が上がります。 逆にこの部分のパーフォーマンスが悪いがゆえに有能でありながら人気のない人もいます。 個々の評価を重視しすぎることも口だけ取締役を重用することにつながります。

 取締役の評価項目は私の場合結構煩雑なものになります。 そこで一律の年収に決めました。 取締役の場合それ相応の年収ですからもっと年収を増やしてほしいというリクエストはありませんが、評価してほしいという希望は強くあります。 包括的に評価しているのですがこの部分でこれを成し遂げたから評価してほしいというものです。

 それを言い出したら各取締役は苦渋の選択を多くしていて、最善であるにもかかわらず悪く言われている人もいるので、全部を知ってそれを言うか、心情において理解しても人に言えない決定を下している人は腐ってしまうと思いました。

 仕事の中には日の当たるものとそうでないものがあり、取締役は組織単位の長で、部署の企画を行い、商談もこなし、業務が多様に過ぎるように思いました。

 先日の取締役会で取締役は何をしたいのか明確にしてほしい、何でもかんでも自分でやろうとするな、業務を分割して人に任せ、部下を信じ、部下を育ててほしいとお膳をひっくり返すようなことを言ってしまいました。

 会社が早々成熟期を迎え、保守的になって成長が止まるのは私は認容しがたたいことです。 みんなは理解しがたく、議論は盛り上がりを欠きましたが、さんざん考えてもそれが結論、各取締役が自分の仕事を分析整理し、何に注力するか決められなければ、つまりそういう文化を気づきたいなら私は会社にとって不要な人材と思いました。

 

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社員総会

昨夕社員社員全員が集い、業績報告と懇親会を兼ねた総会を開催しました。 当社の社員数は約140人、100人強が参加したと思います。

当社の事業所は10以上に分かれているので普段全く顔を合わさない人がいます。 それゆえ社員総会で初めましてということが起こります。 当初は事業場所ごとにかたまり、話をしてお酒を飲むのですが、最近雰囲気が変わってきて、同じ部門で別の店の人が一緒に飲んでいたり 、部門をまたいで話をして入りします。 この傾向は回を重ねるごとに顕著になってきました。

もちろん反りの合わない人もいますし、話が下手な人で一人で黙々と飲んで食べている人もいます。 同じ組織の人が初対面でも気楽に話し、連帯感を持つのが社員総会の一つの目的ですが、完全にはうまくゆきません。

この社員総会では初めの30分に幹部の業績説明や事業方針の発表があります。 私も毎回5分の時間が割り当てられて全体の評価や会社全体の展望を話します。 これがたまらなく苦痛です。 原稿を作るのですが、前回、前々回の話した内容を踏まえ、一貫した話に仕上げます。 原稿ができるとそれを読みあげ、丸暗記します。 キッチンタイマーで時間を図りながら5分に収まるようにするのですが、ペーパーでまとめた時は筋が通っているように思えても声に出すと意味が通らないように感じます。 修正をして読み直しても同じで、新たな論理矛盾を感じてしまい、修正を重ねることでますます混乱します。 筋が通らないと思うから暗記できません。 意味不明なのですが、伝えたいことが明確なのに伝えることができない、苦しんでしまいます。

しかし、普段ぼんやり考えていること、気が付いたこと、考えなければならない対策などが整理できて作業自体は意味のあることです。 100人強の5分の時間を意味不明のスピーチに使い、我々はこんなリーダーの下で働いているのかと思われるのが悔しい限りです。

オバマ大統領が広島で歴史に残るようなスピーチをしましたが、うらやましい限りです。

友人の一人がよいアドバイスをしてくれました。 「誰も内容など気にしていないし、まともに聞いてもいない、だから堂々と話をすればよい」というものでした。 私は一瞬救われた気になりましたが、伝えたいことがあって伝えられない、堂々と話して立派に見えることより正確に経営者の思いを伝えたい、なぜならそれが私の務めだからと思い、再び落ち込みました。

反省すれば私が考えていることを私の立場で、私の言葉で話しても伝わらないのは明白です。 聞き手の立場で聞き手の言葉で私の考えていることの一部を伝えられれば良かった、それも意識したけど中途半端で話の基軸がずれてしまったのが 論理矛盾をはらんだ原因だった、と気が付きました。 次回は思いのすべてを伝えるのではなく伝えるべきことを伝えることに注力してみます。

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代表取締役の役割

当社では一般企業より権限委譲が進んでいると思います。 調剤薬局や高齢者介護の事業はいわゆる制度ビジネスと呼ばれ、関係法令などで詳細に事業内容が決められています。 その内容に従って多様な現場は制度内の判断を積み重ね、事業を進めてゆきます。

現場の判断はいちいち承認するようなものではなく、たとえば値引きであれば一定の基準が決められ、それを超えるものは店長の決済にゆだねられています。 個別に把握することは煩雑で、各店の利益率が大きく変動した時に理由を確かめる程度です。

資産購入についてもリース契約による導入が一般的ですが、車の購入などは事後報告になっています。

配置転換や昇進・降格など人事についても現場の管理職の提案を承認しますが、基本的に拒否しません。

各事業部門の方針も組織長に委ね、全体整合に支障をきたさない限り否はありません。 間接的にはトップダウンの予算を提示しますのでそれに向けて組織長は事業計画を立案します。

そこまで自らの権限を委譲して残る仕事は会社の基本方針や代表としての仕事、取引先の挨拶を受けたり、大きなクレームで謝罪に行ったり、債務の連帯保証人になる、会社行事でスピーチを行う、各事務所を回って笑顔で話を聞く、そして最終責任をとることでしょうか。

自分で直接やっている業務として採用面接があります。 最後まで残った実務ですが、これも外れてもよいようになってきました。

トップセールスなど顧客が一般個人の業界ではありえません。 やる事が無くなってきて遊んでおればよいというものではなく、難問が持ち上がれば相談に応じ、一定の判断をしなければなりません。 つまりは存在を否定されているわけではなくより重要視されているということです。 大きな決断、苦しい決断、状況の見えない中での決断など行うに際して多大なエネルギーが必要で、いつでも最善の判断ができるよう一般的な情報を集め、歴史に学び、考え方について常にシュミレーションを行っておかねばなりません。

めったにない危機に際した判断をいつ求められるかわからい状況で、いつでも受けて立てる気力を維持するのは小心者の私にとって辛いものです。

個々の業務を適当な人に振っていた時は仕事が減って余裕ができました。 しかし作業に追われているほうが気が紛れていざという時に力が発揮できるように思えてきました。 大企業の同年代の社長が朝から晩までアグレッシブに働いている姿は眩しくもあります。

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小売業の生産性

日本のサービス業の生産性が欧米に比べて低いと新聞に報道されています。 以前から疑問に思っていました。

日本で何らかのサービス業にお世話になれば、たとえば買い物をすると店員の人はスーパーマーケットでもコンビニでも服屋さんでも商品のディスプレーを整えたり在庫を補充したりでよく働いています。

生産性をどのようにして測るのか難しい問題と思いますが、労働生産性であれば一人当たり一時間当たりの稼得利益でしょうか? 日本のサービス業はどちらかといえば過当競争、競争そのものが悪いわけではないのですが過当となると競争に勝ち残るために無理がたたります。

従業員にしわよせがくる場合は長時間労働やサービス残業、価格競争で利益なき事業、材料の品質低下などです。

当社営業職は予告残業時間込の賃金設定で、予告残業代を除けば基本給は低いものになります。 そこで基本給を上げるか予告残業をなくして定時以降勤務はすべて残業代を払うかの選択が話題になりました。

どちらにしても営業職の時間当たりの所得は増えますので生産性を上げなければなりません。 粗利に占める人件費率=労働分配率を一定とするなら営業職の年収は営業の稼ぐ粗利が一定とすれば賞与が減って賃金による分配が増加することになります。 年収という所得総額が減り、労働時間も減少する可能性があります。 残業を禁止するわけではないので以前と同じ効率で残業しなければという前提です。

しかし、残業という苦痛がなくなり生産性が上がり、年収の減少が見られないかもしれません。 会社が行うのは生産性を高める個人スキルアップの研修を増やすこと、効果的な戦略立案、戦術展開でしょうか。

営業の現場では当社のほうが取引条件が良くても採用されない場合が多く、何度も足を運んで信頼関係を築くことをがんばってやっています。 買い手がすべて素直で柔軟に購入先を選ぶのであれば生産性の低い事業者は淘汰されてゆきます。 もちろん当社が淘汰される可能性も十分あります。 淘汰されれば寡占市場となり、競争原理が働かなくなるとも考えられます。 規模拡大に成功した事業者は仕入れ条件も良くなり、利益も増えることになります。 そして過当競争から逃れ、新規開発の訪問は数回で取引開始となるかもしれません。

どちらにしても個人的にはマーケットが柔軟であることを望みます。 日本の購買管理が合理性以外の要因によってバイアスがかかっているのなら(少なくとも介護用品の小売業界では言えますが)淘汰に時間がかかり、介護業界全体の合理化が遅れることになります。

中国では国営企業が合理化を阻害し、ゾンビ企業の淘汰を政策目標にしています。 日本は自由主義制度ですからもう少し素直で柔軟になってもよいのではと思います。

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